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画廊の窓から
2006.8.8(tue)
「男の美、女の美」

前回のコラムから、気がつけばもう一年。
久しぶりの更新はまた暑さ厳しい季節になりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
今年は油価の値上がりなどあまりありがたくない話題が多く、どうやって気分を盛り上げようか
悩むところです。

さて、画廊では時おり「コレクションへの誘(いざな)い」と題し、物故作家や現在活躍する作家
さんの珍しい作品をご紹介するという展覧会を設けています。
毎年、又は隔年で個展を開催している作家さんはほとんどが新作展というかたちになるのですが、
新旧問わず一点一点集めた作品というのも結構あって、それじゃ何かのグループ展でというのも
難しく、なかなか展示する機会がありません。
いわば画廊のコレクションでもあり、「いい!」と思った作品ばかりですから、そういう機会に
たくさん並べて観ることができるのは、ご紹介する側としても、とても楽しみなのです。

もちろん「コレクション」に加えていただきたく展示しているわけですが、絵画の場合、コレク
ターと呼ばれる人が以前に比べ少なくなりました。
財閥が多くあった頃の日本では、一人の作家に莫大な資金をかけて育て上げるような、いわゆる
パトロンと呼ばれる人々も存在したわけですが、今の時代、財産は税金として取り上げられるの
が普通になり、一代で財を築くのも容易ではありません。
余裕もないうえに、趣味や遊びの分野が広がり、絵画の他にもコレクションする対象が増えまし
た。お菓子のオマケから、腕時計に至るまで、あらゆるモノがあふれる時代。

買い物を楽しむのが、男性から女性にかわってきたということもあるでしょう。
ひとつのテーマを決め数多く収集するというタイプは男性に多く、女性はたいてい好きなものが
ある程度集まったら今度は実用にまわすことを考えます。
どちらがいいというわけではありませんが、知識に沿ってものを集めていくのが好きなタイプは
多少の講釈はあっても好みがそう変わらずコツコツと持久力があり、一方、初めて観る作品でも
その場で気に入ったらパパッと決めるけれど集めることには執着がない女性のようなタイプは、
より魅力的なものへと好みも変わっていきます。

美学を追求するか、美意識を改革していくか。

美術館をつくるか、暮らしの美を楽しむか。

そのどちらもが、生活や心を豊かにしてくれるのは確かです。
食べて眠るだけでも肉体は維持できますが、精神のバランスをとる一番の栄養は「美」です。
日常の、ささやかな美。
夕焼けがきれいだとか、風鈴の音が心地良いとか、いい絵を観たとか、それだけのことで、
人間はきっともっと元気になれるはずです。
この夏も、なるべくたくさんの「いいもの」に触れて心豊かに過ごしましょう。


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06.13.thu  「インディゴ・ブルーの夕暮れ」
06.08.sat  「INTRODUCTION」
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